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2012年03月09日(金)15時41分

 薬学講座(12)要因分析に基づく褥瘡ケア-緩和ケアとしての褥瘡ケア-


要因分析に基づく褥瘡ケア
-緩和ケアとしての褥瘡ケア-

静岡県立静岡がんセンター副院長 青木和恵



 
創傷には必ず要因があり、これを取り除けば創傷は治癒する。褥瘡は創傷の一つであり、褥瘡ケアとは褥瘡要因を取り除くことと言える。褥瘡の要因は二つで、一つは「体圧の上昇」でありこれは必須要因である。もう一つは皮膚や皮下組織などが脆く弱くなる「組織耐久性の低下」である。褥瘡はこの二つの要因が絡みあって発生する。しかし褥瘡には、これら直接的な発生要因を生み出すさらに根本的な要因がある。がん終末期では、がん悪液質症候群から起こる浮腫、るいそう、麻痺などの終末期がんの症状や、呼吸困難やがん性疼痛などを緩和するための同一体位の持続などの症状緩和対策がその根本的要因である。したがってがん終末期の褥瘡を治癒させるには、これら根本的要因を取り除くことが必要となるが、すでに終末期がんの進行によりそのことは不可能であることが多い。そこに緩和ケアとしての褥瘡ケアを展開する意味があるのである。
緩和ケアとしての褥瘡ケアを展開するうえで最も大切なことは、ケア目標の設定である。要因となる終末期がんの症状を褥瘡発見時よりも緩和できるか否かによって目標が決まる。緩和できると判断する場合には、褥瘡要因の除去あるいは軽減が可能となるので「褥瘡の治癒あるいは改善」を目標とする。緩和できないと判断する場合には、要因を取除けないので、褥瘡治癒は不可能として「褥瘡感染の防止と苦痛の緩和」を目標とする。この目標設定を間違うと患者のQOLに大きく影響して緩和ケアとしての意味を失う。
「治癒あるいは改善」の場合には、疼痛、呼吸困難、倦怠感、浮腫などの症状を取り除く、あるいは緩和することが最も重要なケアとなる。これら終末期がんの症状を除去あるいは緩和することで、体圧分散ケアの実施が可能となり治癒あるいは改善が達成される。並行して創傷の治癒過程をスムーズに進めていくための褥瘡治療を行う。「褥瘡感染の防止および苦痛の緩和を目標とする場合」には、すでに行っている疼痛緩和や呼吸困難対策など、症状緩和対策を可能な限り継続して行っていく。その上で薬剤などによる褥瘡感染防止のための管理、褥瘡治療やケアに関連する苦痛の緩和を行う。
どちらの目標を設定しても、体圧分散と、組織耐久性の低下の防止が必要となる。開発の目覚ましいエアマットなどの分散寝具や用具を用いて、時間的、空間的に可能な限りの体圧分散を行う。皮膚の洗浄や保湿などのスキンケア、タンパク質や電解質などの摂取をサポートする。ただしあくまでも根本的要因である終末期がんの症状に関する緩和対策に競合しない範囲で行うことが、緩和ケアとしての褥瘡ケアとして最も肝要なことである。

資料:「要因分析に基づく褥瘡ケア-緩和ケアとしての褥瘡ケア-」(スライド)
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※本記事は、平成24年2月19日に静岡県立大学で行なわれた、平成23年度薬学卒後教育講座 『チーム医療における薬剤師の役割 第2回褥瘡ケアについて』(薬学部・静薬学友会主催)によるものです。

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2012年03月09日(金)15時40分

 薬学講座(11)在宅褥瘡における薬剤師の役割


在宅褥瘡における薬剤師の役割

チューリップ薬局平針店管理薬剤師
NPO愛知県褥瘡ケアを考える会代表
 水野正子




 住み慣れた家で家族とともに最期の大切な時間を過ごしたいと願う人が増え、また積極的に退院を勧める病院も増えて、在宅でのターミナルケアは珍しくなくなっている。
家族は心をこめて介護したいと願っているが、現状ではその負担は軽くない。ターミナル時期に褥瘡ができやすいのは色々な要因が重なり合うせいだが、介護者は自分のケアに不足があったのではないかと自分を責め、周りからも手抜きがあったと思われているのではないかと、傷つくことも多い。さらに大切な家族がその人らしさを保っていると認識するためには見た目も大切で、褥瘡ができることは大きな心配事になる。
 褥瘡は適正な薬剤選択により速やかな改善がなされ、それには薬剤師の専門知識が必要である。薬剤師は処方された薬剤の有効性や副作用をアセスメントする義務があり、褥瘡は創を見て初めて判断できることから、在宅訪問し、創をみることが必須になる。さらに褥瘡は生活習慣が大きな影響を与えているため、在宅での患者さんの様子のアセスメントも大切である。そして薬剤の適正使用を実施する上で、常に処置にかかわれる介護スタッフや家族への薬剤の使い方の指導は欠かせない。
 今回は人手、物品、時間、お金等が不足しやすい在宅での褥瘡治療に薬剤師が関わる必要性と工夫、多職種との連携の重要性を症例を交えてお話したい。在宅医療に薬剤師が関わることの重要性は頻繁に耳にするが、実際に在宅に出かけている割合はまだ多くないと思われる。褥瘡治療をきっかけに、在宅医療に関わる薬剤師が増えていくことを願っている。
  
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※本記事は、平成24年2月19日に静岡県立大学で行なわれた、平成23年度薬学卒後教育講座 『チーム医療における薬剤師の役割 第2回褥瘡ケアについて』(薬学部・静薬学友会主催)によるものです。

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2012年03月09日(金)15時40分

 薬学講座(10)褥瘡チーム医療に薬剤師が関わるほんとうの意義って?-薬剤師の視点を活かした外用療法とフィジカルアセスメント- 


褥瘡チーム医療に薬剤師が関わるほんとうの意義って?
-薬剤師の視点を活かした外用療法とフィジカルアセスメント-

独立行政法人国立長寿医療研究センター薬剤部副薬剤部長
臨床研究推進部高齢者薬物治療研究室長 古田勝経


 
褥瘡は古くて新しい疾患である。それは褥瘡の発症に起因する要素が多岐にわたり、病態を適切に把握したうえで、原因を特定した適切な治療や予防が行われていないことが最大の理由である。褥瘡の病態は多彩であり、一つの創に多様な病態が存在する。単に感染や壊死組織、肉芽の割合、ポケット形成で判断できるものではない。この点を認識せずに適切な治療はできない。ましてや、外用剤の適正使用は不可能といっても過言ではない。外用剤はこれまで注射薬や内服薬に比べ、1ランク下のような感覚で捉えてきた。つまり、単なる塗り薬という感覚でしかみていない。このことが外用療法を軽視し、たとえ副作用が発現しても致命傷にいたることはないと勝手な判断をしてきた経緯がある。この軽率な考えは、外用剤の主薬主義をつくりあげてきた。軟膏剤にいたっては、基剤は単に添加剤であり、薬効には影響しないとの誤った考え方が存在する。褥瘡のような皮膚潰瘍では創の適切な湿潤環境が治癒基盤となり、創面と接するこの基剤の特性が大きな役割を果たす。主薬が奏効するかどうかは滲出液量と基剤特性により決まる。内服薬や注射剤では後発品への切替に添加剤や賦形剤などで議論されるが、外用剤は基剤の影響に配慮する考えはほとんど聞かない。明らかに外用剤軽視である。それらのことが褥瘡という疾患の適切な外用治療を後退させ、治りにくい、治らない褥瘡をつくってきたと考える。また創傷被覆材についても特性を考慮した使い方がもとめられる。褥瘡は治療と予防を同時に進行させることが不可欠であり、各職種の視点を尊重したチーム医療がもとめられる。治らない褥瘡には適切さを欠き、安易に簡便さや安価といった本来の医療とは異なる議論がなされている。
 現在、病態を正しく読み取ることに薬剤師も感心をもつべきである。これは、取りも直さず疾患としての病態を的確に把握し、治癒を目指すことである。内科的疾患と異なり、褥瘡は病態を目で見て、フィジカルアセスメントによる確実な薬物療法を実践することができる。薬剤師が薬物療法に介入することによって効果的な治療が施行でき、治療期間が短縮されることが明らかになった。それは患者のQOLの向上や医療費の抑制にもつながる。褥瘡はチーム医療の原点である。重要なことは薬剤師のフィジカルアセスメントを活かした視点であり、病態に適した薬剤特性を考慮した薬剤の選択使用を他職種と協働することである。
 

※本記事は、平成24年2月19日に静岡県立大学で行なわれた、平成23年度薬学卒後教育講座 『チーム医療における薬剤師の役割 第2回褥瘡ケアについて』(薬学部・静薬学友会主催)によるものです。

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2012年03月09日(金)13時26分

 薬学講座(9) 総論


医薬品提供体制の中で薬剤師に期待するもの

医薬品医療機器総合機構審査マネジメント部長 磯部総一郎


 

資料:「医薬品提供体制の中で薬剤師に期待するもの」(スライド)
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※本記事は、平成24年2月19日に静岡県立大学で行なわれた、平成23年度薬学卒後教育講座 『チーム医療における薬剤師の役割 第2回褥瘡ケアについて』(薬学部・静薬学友会主催)によるものです。




 
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