トップページ » アーカイブ

2011年11月14日(月)13時32分

 薬学講座(7)  保険薬局における在宅医療へのとりくみ~薬剤師間のネットワーク構築と他職種連携~


保険薬局における在宅医療へのとりくみ
~薬剤師間のネットワーク構築と他職種連携~

浜松市薬剤師会理事(薬局フォーリア) 曽布川美登理



  社会の高齢者化に伴い在宅医療の必要性も高くなっている。医療費削減の後押しもあり、地域の医療化はますます進行している。入院期間短縮による在宅患者の増加に伴い、調剤薬局の薬剤師が患者宅を訪問し、在宅管理指導を行う機会も日々増えてきている。
こういった状況の中で調剤薬局の薬剤師は、在宅患者さんとのかかわりが今後ますます必要となると考えられる。
特に緩和医療ではオピオイドをはじめとする薬物療法が中心であり、疼痛コントロールは薬剤師の知識を大いに活用できる現場であると言える。在宅医療に特化している薬局やかかわりの少ない薬局が混在しているが、薬物療法によるがん患者の疼痛ケアを実施している事例もみられる。今回は薬剤師の疼痛ケアに関する業務内容と症例を紹介したい。
ただ、地域に目を向けるとまだまだ薬剤師が在宅医療の場に出てくる機会は少なく、他職種の人たちからは薬剤師の在宅医療における役割がはっきりみえてこない印象があるようだ。そのような現状をふまえ、(社)浜松市薬剤師会は在宅医療で薬剤師が必要とされた時、十分に応えられるよう体制作りの一環として薬剤師間のネットワークを構築した。「P浜ねっと」と名付けたこのネットワークシステムの内容と活動について紹介する。
最後に、今後の課題を考察するとともに必要となる種々の連携について考えたい。
 在宅医療では、薬局の薬剤師と病院薬剤師、病院医師、ケアマネージャー、在宅医、訪問看護師との連携の必要性が考えられる。特に緩和ケアにおいては、在宅移行のための退院時の情報提供が必要とされる。これには退院時カンファランスに薬剤師が参加しなくてはいけないと考えられる。故に薬薬連携は必須であろう。これらのスムーズな連携を実現するためにはどのような方法で、どのようなツールを使用すればよいか、現在試行錯誤中である。薬剤師が在宅医療に介入することは患者さんにとってより質の高い在宅医療につながるとの声がある。私たち薬剤師はこの期待に応えるべく活動をしていきたいと思う。


資料:「保険薬局における在宅医療へのとりくみ~薬剤師間のネットワーク構築と他職種連携~」(スライド)
※ユーザー名/パスワードが必要です。マイページにログインしてご確認ください。


※本記事は、平成23年11月6日静岡県立大学で行なわれた、平成23年度第1回薬学卒後教育講座 『チーム医療における薬剤師の役割』(薬学部・静薬学友会主催)によるものです。




 
Posted by webmaster| コメント(1)
2011年11月14日(月)13時32分

 薬学講座(6)  緩和ケアに必要な薬剤師の知識・技能・態度


緩和ケアに必要な薬剤師の知識・技能・態度
 
聖隷浜松病院薬剤部部長  塩川 満


 
2008年4月からの診療報酬改定により緩和ケアチームに薬剤師が必須条件として加わり、2010年4月からは専任としての位置づけとなった。また、地域がん診療拠点連携病院の診療体制として「緩和ケアチーム」を置くことが明文化され、多くの薬剤師がチームに所属し、薬剤師の活動の場も明確となった。
 薬剤師独自の専門学会である「日本緩和医療薬学会」が2007年に立ち上がり、2010年には緩和薬物療法認定薬剤師が誕生した。認定制度の特徴は他の学会認定薬剤師制度と違い病院薬剤師のみではなく薬局薬剤師も取得できることである。日本緩和医療薬学会は病院薬剤師、薬局薬剤師、薬学研究者が連携を図り、薬物療法の推進と充実、薬剤の開発・学術研究の進歩発展を目的にしている学会であり、現在は地域で緩和医療に精通した薬剤師を育成することが課題となっている。
   緩和医療領域の教育において、医師はPEACE、看護師はELNEC-Jをはじめとする体系的プログラム   があるが、薬剤師には確立した教育プログラムがない。そこで本学会で は教育プログラム作成が早期に必要とされ、2010年度に「教育プログラ ム」作成のための教育目標設定を行った。この内容は今後企画される教育セミナーや教科書作成、そしてeラーニングなどの達成目標でもある。
教育目標は、GIO(General Instructional  Objective:一般目標)1項目とSBO (Specific behavioral Objectives:行動目標)9項目を設定した。項目は「1.疼痛マネジメント、2.疼痛以外の症状マネジメント、3.麻薬の管理、4.化学療法に関するマネジメント、5.薬物相互作用、6.研究・教育、7.全人的側面、8.倫理的側面、9.チームワーク」であり、薬剤師の専門性を育成するために、「麻薬の管理」や「化学療法に関するマネジメント」の項目、臨床研究や緩和医療の教育・啓発・普及を目指すために「研究・教育」の項目を設定したことが特徴である。また、各項目は「知識・技術・態度」に分類して目標を明確にした。
緩和ケア領域で薬剤師が処方提案をするためには「薬剤師の視点」で関与する事が必要である。そのためには、薬剤(特にオピオイド)の特徴を理解する事であり、体内動態(腎・肝機能の確認)や相互作用の知識が必要となる。また起こっている症状が疾患に起因する症状か、薬剤に起因する副作用かを見極める能力、原因を検討する技術も必要である。終末期になると何を優先して症状コントロールするか、本人の意向を確認する必要があり患者さんやご家族への服薬指導は大切な薬剤師の役割である。そのためには、コミュニケーション能力が必要であり、倫理観を持った態度の習得が最も大切である。今後、薬剤師がこの知識・技能・態度を身につけるための「教育プログラム」に期待を寄せる。

資料:「緩和ケアに必要な薬剤師の知識・技能・態度」(スライド)
※ユーザー名/パスワードが必要です。マイページにログインしてご確認ください。


※本記事は、平成23年11月6日静岡県立大学で行なわれた、平成23年度第1回薬学卒後教育講座 『チーム医療における薬剤師の役割』(薬学部・静薬学友会主催)によるものです。


 
 
Posted by webmaster| コメント(0)
2011年11月14日(月)13時31分

 薬学講座(5) がん緩和ケアと薬剤師の役割


がん緩和ケアと薬剤師の役割
 
聖隷三方原病院聖隷ホスピス所長  井上 聡

 
近年、緩和ケアの概念は、急速に変化・拡大しており、WHO(世界保健機関)の緩和ケアの定義も2002年に変更され、それまでの終末期ケア(ターミナルケア)だけにとどまらず「延命を目的としたがん治療とともに可能な限り早期から苦痛緩和と心理的支援を行うべきである。」との考え方になってきました。
 
わが国では、2006年に「がん対策基本法」が成立し、2007年に「がん対策推進基本計画」が策定され、すべての患者・家族の安心のために、がんの早期発見・予防や治療の初期段階からの緩和ケアの実施などが、重点的に取り組むべき事項として盛り込まれました。
 また、2010年には、日本緩和医療学会より「がん疼痛の薬物療法に対するガイドライン」が出版されました。
今回、がん緩和ケアの現状について紹介し、このガイドラインをふまえたがん疼痛マネジメントのポイントについてチーム医療における薬剤師の役割を交えながらお話したいと思います。 
                  
資料:「がん緩和ケアと薬剤師の役割」(スライド)
※ユーザー名/パスワードが必要です。マイページにログインしてご確認ください。

※本記事は、平成23年11月6日静岡県立大学で行なわれた、平成23年度第1回薬学卒後教育講座 『チーム医療における薬剤師の役割』(薬学部・静薬学友会主催)によるものです。

 
Posted by webmaster| コメント(0)