2012年03月09日(金)15時40分

 薬学講座(10)褥瘡チーム医療に薬剤師が関わるほんとうの意義って?-薬剤師の視点を活かした外用療法とフィジカルアセスメント- 


褥瘡チーム医療に薬剤師が関わるほんとうの意義って?
-薬剤師の視点を活かした外用療法とフィジカルアセスメント-

独立行政法人国立長寿医療研究センター薬剤部副薬剤部長
臨床研究推進部高齢者薬物治療研究室長 古田勝経


 
褥瘡は古くて新しい疾患である。それは褥瘡の発症に起因する要素が多岐にわたり、病態を適切に把握したうえで、原因を特定した適切な治療や予防が行われていないことが最大の理由である。褥瘡の病態は多彩であり、一つの創に多様な病態が存在する。単に感染や壊死組織、肉芽の割合、ポケット形成で判断できるものではない。この点を認識せずに適切な治療はできない。ましてや、外用剤の適正使用は不可能といっても過言ではない。外用剤はこれまで注射薬や内服薬に比べ、1ランク下のような感覚で捉えてきた。つまり、単なる塗り薬という感覚でしかみていない。このことが外用療法を軽視し、たとえ副作用が発現しても致命傷にいたることはないと勝手な判断をしてきた経緯がある。この軽率な考えは、外用剤の主薬主義をつくりあげてきた。軟膏剤にいたっては、基剤は単に添加剤であり、薬効には影響しないとの誤った考え方が存在する。褥瘡のような皮膚潰瘍では創の適切な湿潤環境が治癒基盤となり、創面と接するこの基剤の特性が大きな役割を果たす。主薬が奏効するかどうかは滲出液量と基剤特性により決まる。内服薬や注射剤では後発品への切替に添加剤や賦形剤などで議論されるが、外用剤は基剤の影響に配慮する考えはほとんど聞かない。明らかに外用剤軽視である。それらのことが褥瘡という疾患の適切な外用治療を後退させ、治りにくい、治らない褥瘡をつくってきたと考える。また創傷被覆材についても特性を考慮した使い方がもとめられる。褥瘡は治療と予防を同時に進行させることが不可欠であり、各職種の視点を尊重したチーム医療がもとめられる。治らない褥瘡には適切さを欠き、安易に簡便さや安価といった本来の医療とは異なる議論がなされている。
 現在、病態を正しく読み取ることに薬剤師も感心をもつべきである。これは、取りも直さず疾患としての病態を的確に把握し、治癒を目指すことである。内科的疾患と異なり、褥瘡は病態を目で見て、フィジカルアセスメントによる確実な薬物療法を実践することができる。薬剤師が薬物療法に介入することによって効果的な治療が施行でき、治療期間が短縮されることが明らかになった。それは患者のQOLの向上や医療費の抑制にもつながる。褥瘡はチーム医療の原点である。重要なことは薬剤師のフィジカルアセスメントを活かした視点であり、病態に適した薬剤特性を考慮した薬剤の選択使用を他職種と協働することである。
 

※本記事は、平成24年2月19日に静岡県立大学で行なわれた、平成23年度薬学卒後教育講座 『チーム医療における薬剤師の役割 第2回褥瘡ケアについて』(薬学部・静薬学友会主催)によるものです。

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