2011年11月14日(月)13時32分

 薬学講座(6)  緩和ケアに必要な薬剤師の知識・技能・態度


緩和ケアに必要な薬剤師の知識・技能・態度
 
聖隷浜松病院薬剤部部長  塩川 満


 
2008年4月からの診療報酬改定により緩和ケアチームに薬剤師が必須条件として加わり、2010年4月からは専任としての位置づけとなった。また、地域がん診療拠点連携病院の診療体制として「緩和ケアチーム」を置くことが明文化され、多くの薬剤師がチームに所属し、薬剤師の活動の場も明確となった。
 薬剤師独自の専門学会である「日本緩和医療薬学会」が2007年に立ち上がり、2010年には緩和薬物療法認定薬剤師が誕生した。認定制度の特徴は他の学会認定薬剤師制度と違い病院薬剤師のみではなく薬局薬剤師も取得できることである。日本緩和医療薬学会は病院薬剤師、薬局薬剤師、薬学研究者が連携を図り、薬物療法の推進と充実、薬剤の開発・学術研究の進歩発展を目的にしている学会であり、現在は地域で緩和医療に精通した薬剤師を育成することが課題となっている。
   緩和医療領域の教育において、医師はPEACE、看護師はELNEC-Jをはじめとする体系的プログラム   があるが、薬剤師には確立した教育プログラムがない。そこで本学会で は教育プログラム作成が早期に必要とされ、2010年度に「教育プログラ ム」作成のための教育目標設定を行った。この内容は今後企画される教育セミナーや教科書作成、そしてeラーニングなどの達成目標でもある。
教育目標は、GIO(General Instructional  Objective:一般目標)1項目とSBO (Specific behavioral Objectives:行動目標)9項目を設定した。項目は「1.疼痛マネジメント、2.疼痛以外の症状マネジメント、3.麻薬の管理、4.化学療法に関するマネジメント、5.薬物相互作用、6.研究・教育、7.全人的側面、8.倫理的側面、9.チームワーク」であり、薬剤師の専門性を育成するために、「麻薬の管理」や「化学療法に関するマネジメント」の項目、臨床研究や緩和医療の教育・啓発・普及を目指すために「研究・教育」の項目を設定したことが特徴である。また、各項目は「知識・技術・態度」に分類して目標を明確にした。
緩和ケア領域で薬剤師が処方提案をするためには「薬剤師の視点」で関与する事が必要である。そのためには、薬剤(特にオピオイド)の特徴を理解する事であり、体内動態(腎・肝機能の確認)や相互作用の知識が必要となる。また起こっている症状が疾患に起因する症状か、薬剤に起因する副作用かを見極める能力、原因を検討する技術も必要である。終末期になると何を優先して症状コントロールするか、本人の意向を確認する必要があり患者さんやご家族への服薬指導は大切な薬剤師の役割である。そのためには、コミュニケーション能力が必要であり、倫理観を持った態度の習得が最も大切である。今後、薬剤師がこの知識・技能・態度を身につけるための「教育プログラム」に期待を寄せる。

資料:「緩和ケアに必要な薬剤師の知識・技能・態度」(スライド)
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※本記事は、平成23年11月6日静岡県立大学で行なわれた、平成23年度第1回薬学卒後教育講座 『チーム医療における薬剤師の役割』(薬学部・静薬学友会主催)によるものです。


 
 

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